奇跡の新聞2

実はAさんはかつて貿易の会社の社長だった。倒産し、豪邸を含めた全てを失い今は公団にご夫婦で住んでいるとのことだった。
「英語も話せないのにオーストラリアへ飛び現地で英語を学びながら仕事をしていた。辛い経験もあったが自力で英語を学び英語だけでビジネスをしていた。ジョークもビジネスに必要だったからね、随分上達したよ」
と話しながら、英語の辞書を私に手渡した。

「あなたが英語のクラスをやると言ったとき、あの頃のことを思い出しもう一度英語を話したいと思った。迷惑だっただろうに仲間に入れてくれたことを感謝している。これは自分が英語で苦労しているときに使っていた辞書だ。もう使わないから君に使ってほしい」
と添えられた言葉に返事ができなかった。

 

しばらくして、私が偶然にも、オーストラリアへ旅行することが決まった。Aさんは
「一つだけ願いを聞いてくれないか? シドニータイムズ(記憶あいまいで正確な名前ではない)という新聞を買ってきてほしい。何もいらない。ただその新聞があればいい」
と私に新聞代を手渡した。
が、私が行くのはケアンズだ。現地では習った英語を駆使し
「シドニータイムズ please」
と購入を試みる。
「What? ここはケアンズあるね」
さらに友人はハワイアンホストというチョコを買って来いという。
「ハワイアンホスト please」
「What?  ここはケアンズあるね」

………..だよね

何としてでも新聞を購入したいが、現地のツアーコンダクターに相談しても、輸送してくれるが私の滞在中の入手は難しい、と言われる。友人にはケアンズのチョコで我慢してもらったが、唯一、新聞だけを心残りにしてカンタス航空の飛行機のシートに座った。

 

すると座席の目の前のポケットに新聞がある。掃除が完全ではなかったのだろうか? 何気なく新聞を広げると
「The Sydney times」
「うそや!」
それも2日分!文字が光るのを始めてみた。

 

「What? ここはケアンズあるね」の下りを説明し、これしか手に入らなかったことを謝罪しながら新聞を手渡した。もちろん、Aさんは読み古した新聞を広げかなり喜んでくれた。

実は、Aさんが始めてシドニーに着いた時、この新聞の広告から住むところを探し、英語もこの新聞で学んだ。そんな思い出が沢山ある物だったのだ。まさかもう一度この新聞が読めるなんて、と言うAさん。古い新聞がこれほどまでに価値のあるものだと知って、この奇跡ともいえる出来事に感謝した。

 

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