最高の霊能者 1

随分前、いや昔の話と言ってもいいかもしれない頃の出来事です。
この頃、霊能者という存在に対して懐疑的でした。そう、あの方と出会うまでは。

過去に書いたものですが、ブログ移設でこちらに掲載します。

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ある日、自分の車は買って半年の車だったのに、どういうわけか父の車に乗り本屋さんへ出かけた。バッグは買って1か月の、今じゃ買う気にもならないブランドと言われる物で、その中にこれまた、どういうわけか自分の車のキーを、それもご丁寧にスペアキーまで入れていた。財布と父の車のキーだけを持ち本屋さんへ入って、立ち読みして(お勧めしない)本屋さんを出て車に戻ったらバッグがない。
手に持った財布とキーを握りしめ立ち尽くすことしばし。理解したのは「車上狙い」。
帰宅途中にある派出所で被害届を出したがお巡りさんが「出てこないと思った方がいい」と言う。しばらく口がきけないほど落ち込んだ。

翌日、あまりに落ち込む私に母が
「公園のおばあさんの所へ行け」
と言う。何やら、不思議な力を持っているおばあさんらしい。行方不明者や家出をした人の足を止めて遠くへ行かないようにしてくれるという。盗まれたバッグも遠くへ行かないように頼んで来い、というのがだが遠くに行かないだけで、見つからなければ意味がないではないか?とほぼ無視を決め込んだ。そもそもキーがないからそこに車があっても乗れないわけで。

しかし、占いやら、霊能者やら、全く信じないあの強烈なキャラクターの母親が私に言うからにはよほどの人物なのだろう。そこでお世話になっている自動車屋さんに相談すると、運がよくその会社は慰安旅行へ行くため、2日間は無料で車を貸してくれると言う。嘘みたいなラッキーを味方につけ、半信半疑のまま、公園のおばあさんの所へ出かけた。

場所はすぐに判った。普通の一軒家だったが外に赤い旗が立っている。家の中に通されると廊下のようなところで「ここで待っていてください」と言われる。そこは少し古い日本家屋、といった感じだったと思う。

呼ばれて中に入ると、そこは8畳ほどの和室で祭壇があり、座布団の前にお賽銭箱が置いてあった。そこにいたのが母の言うおばあさんで、これがおばあさんとの初対面だった。確かにご年齢はおばあさん、という感じではあるがすごい人オーラはゼロ。大丈夫だろうか?

中央に座ると「どうしたね?」と聞かれたので事情を話す。すると、くるっと後ろを向き、祭壇のに立った。
神様が祀ってあるようではあるが何かは判らない。ただ、そこにはよく見ると石が置いてある。25センチから30センチぐらいの大きさだと記憶している。
おばあさんは手を合わせ独り言をつぶやき始めた。

時々私の方を振り返り質問をする。
「大きいカバンか?  色は?」
それに応えると、また神様の方を向く。
詳細な情報が必要なのだろう。ただ、おかしなことが一つある。おばあちゃんは石を目の前に一人で会話をしているのだ。それも石を持ち上げたり降ろしたりしている。
「ああ、そうですか。 そりゃ、そりゃ」
でも私には石からの回答は聞こえない。私は耳を澄ましここかから聞こえてくるはずの声を聞き取ろうと試みた。それでも聞こえるのはおばあちゃんの声だけだ。

 

石を持ち上げたり降ろしたりしながら会話をすることしばし。不思議な時間に終わりがきた。くるっと振り返り私を見て
「出てくると言っておらっしぇる」
「・・・・・・・・・え?(誰が???)」
「お母さんは何しとらっしぇる?」
「家にいます」
「おかあしゃんと一緒にいきなしゃ。本屋の南北の道の草むらの中にあると言っておらっしぇる。」
「・・・・ありますか?(だから誰が?)」
「ある、と言っておらっしぇる」
「・・・・・はぁ。。。」
私には聞こえないと判断するのが正しいのか、それとも聞こえない私がおかしいのか?

「行ってきなしゃ~」
の一言で我に返り自宅へ戻った。